昔ながらの素朴な表情、ふわっと優しい手ざわり。
「ウォルドルフ人形(Waldorf Doll)」は、まるで絵本の世界から出てきたような、あたたかい手作りのお人形です。
ポポちゃんやメルちゃんのような一般的なお世話人形とはちょっと違って、表情はあえてとてもシンプル。でも、その“あえて”がすごく大事なんです。
子どもは、シンプルなお顔だからこそ自由に感情をのせて遊ぶことができ、自分の内面と向き合うように、じっくりお世話していく……。
そんな姿を見ていると、大人の私たちまで心がじーんとしてしまいます。
この記事では、
- ウォルドルフ人形の魅力
- どこで買えるの?
- どうやって作れるの?
といった疑問にわかりやすくお答えしていきます。
心と心がつながるような、お世話遊びの時間。

あなたのおうちにも、そんな豊かなひとときを運んできてくれるお人形との出会いがあるかもしれませんよ。
ウォルドルフ人形とは?
ウォルドルフ人形は、ドイツ発祥の「シュタイナー教育」の考え方をもとに生まれた、あたたかみのある抱き人形です。
もともとは、スウェーデンの教育者Karin Neuschutz(カーリン・ノイシュッツ)さんが、自身の著書『LEK MED MJUKA DOCKOR(ぬいぐるみ人形とあそぼう)』の中で紹介したことがきっかけ。その魅力がじわじわと広がっていきました。
日本では、その本を翻訳した佐々木奈々子さんが「ウォルドルフ人形」と名づけて紹介したことで、多くの人に知られるようになったんです。
ウォルドルフという名前は、実はドイツにある“ヴァルドルフ学校”に由来しています。
ここは、世界で初めてのシュタイナー学校として知られていて、“シュタイナー教育”よりも“ウォルドルフ教育”の名で親しまれるほど。
つまり、このお人形は、シュタイナー教育の精神を象徴するような存在なんですね。
ただのかわいいお人形、ではなくて、子どもの心を育てるために、想いを込めて作られた“特別な人形”。



そんな背景を知ると、ますます手に取ってみたくなりませんか?
ウォルドルフ人形の特徴
ウォルドルフ人形には、大人の私たちが「へぇ!」と思うような、こだわりがたっぷり詰まっています。
見た目だけでなく、触れたときの感触、そして誰が作るかという部分にまで、意味が込められているんですよ。
では、その特徴を順番に見ていきましょう。
- 想像力をかきたてる見た目
- 感覚を刺激する素材
- この子のために作られた特別な人形
想像力をかきたてる見た目


まず注目したいのは、そのお顔。
“小さなインクのしみ”と表現されるように、目や口がとても小さくて、場合によっては「顔、描いてないの?」と思うくらい控えめなんです。



わかるかわからないかくらい、小さいね~! なんで?
これにはちゃんと理由があります。
シュタイナー教育では「おもちゃは未完成であるべき」とされていて、あえて余白のある姿にすることで、子ども自身の想像力を引き出すことを大切にしているんです。
たとえば、にこにこ笑っているように見える日もあれば、ちょっぴり寂しそうに見える日もある。



うれしそうにわらっているね!



今日は少しげんきない?



単純で素朴なほど想像力を働かせることができるというわけね。
そう、お店で売られている有名なお世話人形は大人にとっては良質なおもちゃに思えますよね。ですが表情が決まっていていつも同じ反応をします。
決まった反応を繰り返すだけの人形にはいずれ飽きが来てしまうことも。
その点、ウォルドルフ人形は素朴な表情だからこそ、多彩な反応を返してくれるのです。
子どもの心の状態を、まるで映し出すかのように表情が変わる――それがウォルドルフ人形の魅力というわけですね。
決まった笑顔を返してくれる人形とは違い、いつでも“心のお友だち”として寄り添ってくれる存在。
だからこそ、長く・深く愛されるのです。
感覚を刺激する素材
幼児期に五感をたっぷり使った体験をすることは成長に不可欠。そういった体験ができるおもちゃを与えることはとても重要です。
ウォルドルフ人形は「感覚の赤ちゃん」としても知られているくらい、感覚を刺激するお人形です。
体は綿のジャージー素材で作られており、中には羊毛がしっかりと詰めこまれています。
これは子どもの肌の弾力に近づけるため。抱きしめた時にもあたたかみが伝わってきて、子どもが安心するんです。
しかも、長く抱くほど詰め物が温かくなるので、適度な重さと相まって実際の赤ちゃんを抱く感覚に似た感覚を得られるんですよ。



手足がぐにゃぐにゃしたところがない、しっかりとしたバランスなのが特徴ね!
材料はできるだけ天然のものが使われています。
- 髪の毛:モヘアやブークレといった毛、綿
- 肌:綿
- 服:綿
色も自然そのままの色か、草木染で着色しています。これには、小さなうちから自然素材の良さを覚えてほしいという願いが込められています。



子どもにはできるだけ安心・安全なものを与えたいものね。
汚れたら洗えますし、やぶれたら繕えるところも良い点。
抱きしめると柔らかさと心地よさが子どもに穏やかで優しい気持ちを与え、感情を落ち着かせてくれます。心のお友達として永く付き合っていくことができますよ。
「この子のために」作られた特別な人形
ウォルドルフ人形は、基本的には手作りであることが大切とされています。
それは、「この子のために」と想いを込めて作られた人形だからこそ、子どもにとってかけがえのない存在になるからです。



そうは言っても、大きな人形を作るのって難しそう……
もちろん、手芸が苦手でも大丈夫!
今では初心者でも取り組みやすいハンドメイドキットもたくさん出ているので、後ほどご紹介します。
大事なのは、“うまく作ること”ではなく、“思いを込めて作ること”。
ママやパパが一針ずつ縫いながら、「この子が笑顔で遊んでくれますように」と願いを込めて手を動かす……。
その姿を見ているだけでも、子どもは「自分は大切にされている」と感じられるんですよね。
ただし、作るときにはひとつだけ気をつけたいことがあります。
人形の体に針を刺して縫う工程は、子どもにとって縫合手術のようでちょっとショッキングな場合も。
目を縫ったり、首元を糸でしばったりする場面があるので、完成するまでは見せないほうがいいかもしれません。
見えないところで心を込めて作られた人形は、きっとお子さんにとって世界で一番の“心の友だち”になりますよ。
ウォルドルフ人形はいつから(何歳から)?年齢別おすすめタイプ
ウォルドルフ人形は、実は0歳の赤ちゃんから楽しめるお人形。
しかも年齢に合わせて、ぴったりのタイプがちゃんと用意されているんです。
手作りが推奨されているものの、もちろん既製品を購入してもOK。「どれを選べばいいの?」と迷ってしまう方のために、年齢別におすすめのウォルドルフ人形をご紹介しますね。
0歳向けウォルドルフ人形
生まれてすぐの赤ちゃんにぴったりなのが、「ブランケットドール(Blanket Doll)」「タオルドール」と呼ばれるタイプ。
その名のとおり、やわらかな布のような体に、ちょこんとしたお顔がついたシンプルな作り。
四隅には赤ちゃんが握ったり、かじったりしやすい手足がついていて、感覚を育てるのにぴったりです。
この時期は、“遊ぶ”というよりも“ふれる・にぎる・なめる”のがメイン。
だからこそ、赤ちゃんが自然と安心できるような優しい素材と形が大切なんですね。
0歳向けウォルドルフ人形の購入先
ブランケットドールで一番有名なのがナンヒェンというブランドのものですが、日本だとなかなか同じものが売られていません。
楽天ではシュタイナーのおもちゃを扱うお店で、デンマークのネイチャーズーというブランドのブランケットドールが売られています。ぜひチェックしてみてください。
2~3歳向けウォルドルフ人形
2〜3歳になると、「人形」という概念をより理解しやすくなって、お世話遊びが始まる時期。
そんな年齢の子におすすめなのは、ぎゅっと抱きしめられる抱き人形タイプです。
枕のように柔らかくて、しっかりとしたボディ。
ふんわりした手足は、ちいさな手でもしっかり握れるようになっていて、赤ちゃんのころより少しお姉さん・お兄さん気分で接することができます。
もちろん、お口に入れても安心な素材で作られているので、夢中で遊んでも大丈夫♪
2~3歳向けウォルドルフ人形の購入先
ナンヒェンのプチベビー、リトルベビー、ベビー、ナチュラルベビー(日本販売品、大きさ小さい順)などがあります。
4歳向けウォルドルフ人形
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4歳頃になると、ままごと遊びが本格化してきます。
そんな子には、リアルさもあるクラシックなウォルドルフ人形がおすすめ!
やわらかいけれどしっかりしたボディに、動かせる手足、着せ替えできる洋服。女の子の人形は髪の毛もあるので、三つ編みしたり結んだり、毎日のおしゃれ遊びも楽しめます。
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子どもたちは、ごはんを食べさせたり、一緒に寝かせたり、時には先生役になったり……。
お人形とのやりとりを通して、自然に思いやりや社会性が育まれていきますよ。
4歳向けウォルドルフ人形の購入先
クラシックなウォルドルフ人形として有名なのが、ケーセン社で作られているジルケ人形です。
性別、紙の色、肌、服がちがうものがたくさんありますので、ぜひお気に入りの子を見つけてみてください。



ちなみに、我が家にはこげ茶髪の「ジルケ人形・Emma(エマ)」がいます♡
一緒にいるだけで、優しい空気が流れてくるような存在です。
次の章では、「実際に作ってみたい!」という方に向けて、手作りキットや作り方をご紹介します。
ちょっとでも興味がある方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
ウォルドルフ人形の作り方と手作りキット
「この子のために、世界にひとつだけのお人形を作ってあげたい」
そんな気持ちにそっと寄り添ってくれるのが、ウォルドルフ人形の“手作り”という選択です。
作るのが初めてでも大丈夫。
本やキット、丁寧な解説サイトがそろっているので、不器用さんでも安心して取り組めますよ。
ここでは、作り方の基本やおすすめのキット、参考になるサイトをご紹介します。
ウォルドルフ人形の基本サイズ
基本事項として、クラシックなタイプの大きさは4種類あり、小さい方からA体、B体、C体、D体となっています。
- A体:20cm
- B体:30cm
- C体:40cm
- D体:50cm
サイズによる作り方の違いはほとんどありませんが、小さいサイズは細かい作業が多く、大きいサイズはパーツを縫い合わせるのに少し力が要る印象です。
初めて作る場合は、B体(30cm)あたりがバランスがよくておすすめです◎
作り方が学べる本
まずはココから。ウォルドルフ人形作りの入門書として有名なのが、以下の1冊。
日本でのウォルドルフ人形普及のきっかけになった名著です。
写真やイラストが豊富で、見ているだけでも手作りのイメージがふくらみます。
材料がそろった便利なキット
手芸店や木のおもちゃ屋さんでは、初心者でも始めやすい材料キットも販売されています。
- 布、羊毛、糸、髪の毛用毛糸などが一式セットに
- 作り方の説明書付きで安心
お子さんと「どんな子を作ろうか?」と一緒に選ぶのも、素敵な時間になりますよね。
作り方解説
こんな順番で作ります。
- 頭を作る
- 腕と脚を作る
- 体をつなぐ
- 顔をつける
- 髪をつける
- パンツを作る
- 洋服を作る
- タイツを作る
- 靴を作る
実際に作る前にイメージを掴みたい方は、こちらのサイトがとっても参考になります。
写真つきで工程が丁寧に解説されているので、「手を動かしながら一緒に作っている気分」で読めますよ♪
不器用だけど作ってみたいという気持ちがあれば、もう第一歩は踏み出しています。
時間と愛情をこめて作ったお人形は、きっとお子さんの大切な“心のお友だち”になりますよ。
ウォルドルフ人形の与え方・遊び方
ウォルドルフ人形は、ただのぬいぐるみではありません。
子どもにとって、まるで心の奥の気持ちを受けとめてくれるような、特別な存在になってくれるお人形です。
でも、「どうやって遊ばせたらいいの?」「どのタイミングで渡せばいい?」と悩んでしまうママやパパも多いですよね。
ここでは、ウォルドルフ人形を子どもに渡すときのポイントや、年齢に応じた遊び方をご紹介します。
最初に大切なのは、大人のふるまい
ウォルドルフ人形は、子どもが自由に関わることで想像力を育んでいく“オープンエンドトイ”です。
だからこそ、あれこれと「こう遊ぼうね」と教える必要はありません。
むしろ大切なのは、大人がまず人形に愛情をもって接する姿を見せること。
「この子はあたたかくて大事な存在なんだよ」と、やさしく抱っこしてみせたり、お洋服を整えてあげたり。



柔らかくてぎゅっとすると気持ちが良いね!
そうすることで、子どもも自然と「この子って大事な存在なんだ」と感じ、関心をもっていくんです。


年齢ごとの自然な遊びの流れ
赤ちゃんは、ふれたり、抱きしめたりするだけで十分。
ウォルドルフ人形のやわらかさや温かみは、まるで本物のぬくもりのよう。安心できる「はじめてのお友だち」として、そっとそばに置いてあげましょう。
素材は天然のものが使われているので、安心してぎゅっとできますし、汚れても洗えるのでお手入れも簡単です◎
赤ちゃんの頃から“ふれる・にぎる・感じる”を大切にしたい……
そんなあなたにおすすめの、はじめてのおもちゃ(ファーストトイ)特集もご用意しています。


2歳ごろは、だんだんと言葉や動作が豊かになる頃。
ウォルドルフ人形は、まるで弟や妹のように扱われることも多くなってきます。
お着替えをさせたり、おんぶしてみたり、ごはんを食べさせたり……。
子どもなりにお世話してあげるという気持ちが育ち、ままごとの一員として登場することも増えてきます。
この頃になると、遊びの中にその子の心の動きが自然とあらわれてきます。
ふとした仕草やセリフから、成長を感じられるのも、親にとっての楽しみですね!
子どものためにウォルドルフ人形を導入しよう
人形遊び=女の子のものと思われがちですが、それはちょっともったいない話。
男の子にとっても、人形は心を映し出してくれる大切な存在です。
お世話をすることで、誰かを思いやる気持ちが自然と芽生えたり、「この子を守ってあげよう」という気持ちから、責任感やリーダーシップにつながったり。
性別に関係なく、子どもがやさしさや心の豊かさを育む機会になるのが、ウォルドルフ人形の魅力なんです。
そして何より、ママやパパが自分のために作ってくれた、たった一つのお人形。
そんな存在があるというだけで、子どもたちの心の中には、あたたかな根っこが育っていくのではないでしょうか。
お子さんのそばに、ただそっと置いてあげるだけでも大丈夫。
ふとした瞬間に、その子なりの遊びが始まるかもしれませんよ♪
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参考文献:『シュタイナー教育 おもちゃと遊び』
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