フレーベル教育とは?教具の恩物や入門書まで分かりやすく解説します

この記事では、現在の育児や保育の原点とも言えるフレーベルの幼児教育の思想を分かりやすくまとめています。
フレーベルは世界で初めて「幼稚園」を創設した教育者。

フレーベル、フレーベル……
どこかで聞いたことがあるような……。
読み聞かせをしているパパママだったら、聞いたことがある名前かも!
アンパンマンの絵本で有名なフレーベル館は、彼から名前を取っているんですよ◎



今の時代にもつながる教育論を、ぜひ知ってみませんか?
フレーベル教育とは、遊びから生きる力を伸ばす


ドイツ人のフレーベル(1782~1852)は世界で最初の幼稚園を創設し、遊びによって子どもの可能性が開かれるとする幼児教育を考えた人物。
幼児期の遊ぶ力の発達を重要ととらえ、自然体験ができる環境や教具「恩物(おんぶつ)」を開発しました。
恩物というと仰々しいですが、言い方を変えれば知育おもちゃのようなものです。
子どもが遊びによって自ら生きる力を育てること。
これがフレーベル教育の目指す子どもの育て方です。
遊ぶ力が子どもの成長を促すというところは、今話題の非認知的能力の伸ばし方と共通していますよね。
▼非認知的能力についての詳しい内容は以下の記事をご覧ください。


子供の生きる力を目覚めさせる教育思想
『人間の教育』という著書に、フレーベルの考える教育思想が書かれています。
フレーベルの教育思想
人間が自然界の一員であると理解すること。



自然界の一員……なんかそうだいだ~。
フレーベルは、すべてのものは神から創られたもので神の支配にあるとし、自然の法則に従うことを自覚することが教育であると説きました。
また、人間には神から授かった「神性」が宿っている、としています。
この神性の自覚と、体と精神との統一ができることが人間の教育です。



神性は、創造的に活動する力、生きる力などと言い換えることができます。
フレーベルは、幼児のうちにも「神性」が宿っているとしました。
教育というと、通常は机に座って教科書を読み、知識をインプットするもの……というイメージがありますよね。
一方、フレーベルの考える教育とは、自然界の一員であるということを悟り、神性と体・精神を統一し、それを生活の中に表していくことだということです。
フレーベル教育の具体的な方法⇒自由に遊ばせること!


フレーベルはすべての幼児を「善」であるとしました。



善とは、文字通り純粋で素直なことをいいます。
善を内に宿す子どもの教育は、命令や押し付け、干渉であってはならないとしています。
親や教師による一方的な知識の詰め込みはNGということですね。
では、大人が干渉しないでどう発達していくか。
それは「遊び」です。
フレーベルは次のように言っています。
子どもが自主的に選んだ遊戯のなかに将来の内面的な生活がある
遊びであれば、大人の干渉を受けずとも、子ども自身で発達していけるというのです。
つまり、親や教師は遊びの重要性を認識し、遊びを通して成長できるような教育を行うということです。



最近話題の、非認知的能力の育て方と考え方は同じだね!
フレーベル教育の具体的な方法
遊ばせること。
命令・干渉はしない。
フレーベルの教育玩具「恩物」
続いて、フレーベル教育における遊びや教具についてご紹介します。
フレーベルは幼児のために、知育玩具“Gabe”(恩物、おんぶつ)を開発しました。
Gabeは英語でいうGift。
神が人間に与えた素晴らしいもの、という意味から名づけられました。
恩物は、幼児が遊びを通して自然界を理解するのを助けるために、形やサイズに深い意味があるおもちゃ。
数量の概念や図形、デザインの美しさ、いろいろなものに見立てて遊ぶ象徴機能など、さまざまなねらいを持って作られているんです。
恩物の理念をベースに作られたおもちゃもあります。
恩物とはどんなもの?
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恩物の形は、球をはじめとして、円柱・立方体・直方体などの立体、面など幾何学的です。
子どもの発達に合わせ、単純なものから複雑なものを表現できるようになっています。
恩物は第一~第二十までありますが、日本でいう恩物は第十恩物までを指します。
第十一~第二十までは「手技工作」と言い、穴あけや縫う動作など、モノ以外の手技で構成されています。
第十恩物までは基準サイズが3cmに統一されているので、組み合わせて様々なものを作ることができます。



子どもの創造力アップに役立つわね。
恩物の種類
第一恩物 | 毛糸の球(6色) |
第二恩物 | 木製の球、円柱、立方体×2、枠、棒 |
第三恩物 | 木製の立方体×8 |
第四恩物 | 木製の直方体×8 |
第五恩物 | 木製の立方体×21、大三角柱×6、小三角柱×12 |
第六恩物 | 木製の直方体×18、受け×12、柱×6 |
第七恩物 | 色板(正方形・円×8、直角二等辺三角形・直角不等辺三角形・正三角形・鈍角二等辺三角形・半円×16) |
第八恩物 | 棒(3cm・6cm・9cm・12cm・15cm×32) |
第九恩物 | 棒 |
第十恩物 | 色板、棒、輪、粒 |
木はマカンバというものです。
第七恩物~第十恩物はすべて小さなパーツなので、ひとつの箱に区分けされて収納されています。



なんだか不思議なものばっかりだ~!
▼日本で恩物を購入できるショップの代表は「フレーベル館」です。
参考フレーベル恩物特集 楽しみながら発見できる教具-フレーベル館オンラインショップ つばめのおうち-
恩物の遊び方3つ
フレーベルは、恩物を使った遊びを「生活形式」「美形式」「認識形式」の3つに分けていました。
それぞれどんな表現をするのかご紹介します。
- 遊具の生活形式
恩物で家や机、いすなど、自分の身の回りのものを再現する。生活の中で体験したことの再認識になる。 - 遊具の美形式
恩物を組み合わせて花などの美しい模様を作る。 - 遊具の認識形式
恩物を積み上げて、1つのものがいくつかの要素から成り立っていること、数量を学ぶ。
積み木はあえて面取りがされていないのですが、これは積み上げやすくするためだそう。
安定性があるから、次々といろいろなものを作って遊べます。
自然観察
自然観察もフレーベルが注目した遊びです。


子どもに事物の自然な姿を観察させることで、深い知識や洞察力を養います。



自分と事物との関係を認識することで、自然界の一員だと理解するのね。
フレーベルは、子どもたちが遊びながら自然にいのちの移り変わりを見出せるように、草花を育てさせていたようです。
草花だけでなく、小石や砂利、木など様々な素材に触れることも大切にしています。
素材を活用して作品を作るなど、柔軟な発想で思い思いに遊びます。
歌遊び『母の歌と愛撫の歌』
フレーベルは、子どもが母と歌って遊べる「歌あそび」も考案しました。
その実践書にもなっているのが、『母の歌と愛撫の歌』。
子どもと一緒に歌いながら遊べる曲が50曲も載っている楽譜集です。
残念なことに、『母の歌と愛撫の歌』は古い本のため、現在書店では入手不可能。
図書館で探してみてくださいね。
子どもが日常生活で経験することや経験させておきたいことがテーマになっているので、親しみやすいのが特徴です。
手遊び歌は感覚や感性を育てるのと同時に、運動器官を発達させ、丈夫な身体作りもしてくれます。
例えば、「ぱったりこ 子どもがころぶ」。
子どもがすべって転んだときに、母親が起こす様子を題材にした歌遊びです。
ニコニコ あいが おこします
こどもは たのしいことばかり
といった言葉が使われていて、自分がいかに大切に育てられているかを子ども自身が遊びながら実感することができます。
0歳からでも、大人のひざに座って一緒に楽しむことができますよ。
このように、フレーベルの歌を歌いながら遊ぶことで、大人も子どもも心身ともに健やかになっていくのです。



親子のふれあいは、人を健やかに育てるのね。
『母の歌と愛撫の歌』は現在書店では手に入りませんが、お好きな手遊び歌で遊んであげるだけでOKなんです。
YouTubeで「手遊び歌」と検索すれば、たくさんヒットしますよ!
▼我が家で愛用している『くもんのうた200えほん』にも手遊び歌がたくさん載っていておすすめです!


フレーベル理念に基づいた積み木
フレーベルの考えを基にドイツのデュシマ社が1952年から作り続けているのが「フレーベルの積み木」。
フレーベル教育を特別取り入れていないご家庭でも大人気!
楽天おもちゃ大賞2019にもノミネートされていたくらいなんです。
幼稚園でもよく利用されていますよ。
フレーベル基本積み木
まずは基本の積み木をご紹介します。
シンプルなパーツが100個入っています。
レンガ型 | 16個 |
---|---|
レンガ型の縦2倍のサイズ | 12個 |
レンガ型縦半分のスティック型 | 16個 |
キャラメル型 | 16個 |
キャラメル型2個分の立方体 | 16個 |
キャラメル型4個分の直方体 | 8個 |
立方体を斜めに切った三角柱 | 16個 |
合計 | 100個 |
シンプルだからこそ色々な形に発展できるんですよね。



パーツの多さを活かして、大作もできちゃうね!
素材はブナ材で少し重さがあるため、積みやすいのも特徴です。
補充版もあり、基本積み木に追加できるようになっています。
カーブ、ジグザグ、半球などの形があります。
一人で使う場合の目安は100個だそうですが、4歳で6箱分(600個!)使う子もいるそう!
兄弟で遊ぶ場合は、最初から補充しておいても良いかもしれませんね。
▼補充版の積み木をチェック
フレーベルの積み木(補充版)
色板(モザイク)
他にも、「モザイク」というモザイク状の板のセットがあります。
いわゆるパターンブロックで、並べて色々な模様が作れます。


積み木とちがい、パーツが着色されているのが特徴。
また、基本版は12種アソートで600枚と数も豊富です。
色々なものを想像して作れそうですね!
フレーベル幼稚園ではどんな教育をしているの?
キンダガルテン(子どもの庭)という名前の通り、大きな園庭があるのが特徴のフレーベル幼稚園。
なんと、世界で初めての幼稚園では、園児一人ひとりに50cm四方の畑が与えられたとか。



自分で草花のお世話をすると、自分に重ね合わせて成長を意識できるというわけね。
現代のフレーベル園でも、広い園庭や畑が設けられています。
日本の代表的な園としては、東京都北区の「フレーベル西が丘みらい園」などがあります。
参考【フレーベル西が丘みらい園】|株式会社フレーベル館が運営する、東京都北区の認可保育園です。
園庭では、子どもたちはいつでも自然に触れながら遊んでいます。
植物を育てることで自分の成長を意識できるようにしているところも特徴です。
もちろん、教具として恩物も用いられます。
第一~第六恩物までは大人と一緒に使うものとされているようで、見本を見ながら遊びます。
積み木専用コーナーで自由に遊ぶこともできます。
いつ来ても同じ場所にあるので、継続して取り組むことで集中力も身につくというわけです。
フレーベルの生涯と名言
ここで、フレーベル教育が生まれた背景として、彼の生涯についてまとめておきます。
フリードリッヒ・フレーベル(1782~1852)


1782年、ドイツに生まれたフレーベル。
生後9ヶ月で母親と死別、牧師の父は多忙で気まずさを感じていたようです。
継母との関係もうまくいかない彼が向き合ったのが「自然」です。
自然の摂理に従うことを自覚することが教育の目的と説いた彼の思想は、このときの体験がもとになっています。
教育者を目指したのは23歳の時。
当時ヨーロッパで有名だった教育者ペスタロッチと出会い、影響を受けました。
1837年に恩物を考案・制作。
1840年に「あそびおよび作業教育所」を設立、実習のために6歳以下の幼児約40名を集め、「キンダガルテン(=子どもの庭)」と名づけました。
このころから、フレーベルの思想が世間でも理解され始め、幼稚園がぞくぞくと建てられていきました。
しかしプロイセン政府によって、幼稚園を禁止する法令が出されてしまいます。
その翌年にフレーベルは70歳で亡くなりました。
フレーベルの名言・ことば
親として、教師として、子どもをどう導けばいいのだろうか。
ただ、児童をよく観察し、注意をすればよい。
そうすれば、子どもが自らあなた方にその方法を教えるであろう。
からだが疲れるまで飽きずに落ち着いて遊ぶ子はしあわせに育つ
フレーベルがよく分かる本・著書
もっとフレーベルのことが知りたいと思ったときに役立つ本をご紹介します。
『フレーベルの恩物であそぼう』
恩物の実例、大人の声かけ例が載っています。
恩物で遊ぶのが難しそうと思う方の入門書としておすすめです。
『遊びが子どもを育てる―フレーベルの“幼稚園”と“教育遊具”』
フレーベルの生涯と、彼の発明した遊具の数々を、遊び方実例も交えて解説してくれています。


『フレーベル全集』
歌遊び『母の歌と愛撫の歌』を含む、フレーベルが母親や教師の教育のために書いた育児書です。
現在、書店では入手しづらくなっていますので、ぜひ図書館で調べてみてください。
『人と思想164 フレーベル』
フレーベルが理想とした人間教育や幼稚園の本質をまとめた入門書です。
新書サイズで読みやすいです。


参考文献
- 『人間の教育』フレーベル(著), 荒井 武(翻訳)
- フレーベル館のココだけの話|保育者様へ|フレーベル館
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